トップ 最新

ムシカWeb通信


■ 2010/09/01 サマーコンサート終了

 御蔭さまで8/22(日)のサマーコンサートは目出たく終了致しました。お暑い中、いらして下さいました皆々様に心より御礼申し上げます。ずっとお騒がせの連続でしたが、当日も、フォルテピアノのハンマーが折れたり、弦が切れたり、さらに冷房がストップしたりと、突発事故が続きました。暑い、暑いと言いながらも合唱メンバーは「それでもクロイツよりは涼しい」とヒソヒソ声。クロイツ教会は毎週水、木とお借りしている五反田のドイツ語教会ですが、ここにはクーラーが無いのです。そもそも夏にはドイツ人がいなくなってしまい、礼拝もお休みのようです。

 思ったより早く開演前にクーラーが直りほっとしました。本番とは面白くまた不思議なものです。シンとするせいか、練習時には聴こえなかった倍音が突如もの凄い大きさで鳴ったり、バラバラだった皆の顔つきがパッと引き締って非常に感じの良い表情に変ったりと、やはり一回の本番は練習の数十倍の偉力があります。

 シュッツ、バッハ、メンデルスゾーンの音楽にはそれぞれに異なった風貌と香りがあるのですが、共通の地下水脈が感じられ、非常に演奏し易かったように思います。

 合唱は冒頭と最後がメンデルスゾーンのコラール編曲でしたが、細部までキッチリとまとめられ、丁寧な演奏でした。

 シュッツのシンフォニエ・サクレからの3曲はどの曲も思いがけない盛り上がりを見せました。どのパートも一人というアンサンブルで10声となると、これはかなり手強いのです。意外性に富んだ曲の造りに翻弄されながらも終った後は「もっとシュッツの勉強をしたい。徹底的にやりたい」という声が声楽陣からも器楽陣からも上がり、シュッツその人に対する驚きや関心が以前より数等高いことを知らされました。すぐにも勉強会の準備にかかりたいと思います。

 シュッツの《白鳥の歌》の終曲<ドイツ語マニフィカト>は以前から演奏の機会が多かったので、少しずつ洗練されているように感じました。9/17に演奏する《白鳥の歌》全13曲の他の12曲もこの<マニフィカト>と同等あるいはそれ以上の完成度を目指したいものです。

 バッハのカンタータ35番を前に武久さんからオブリガート楽器についての説明がありました。曰く「彼のカンタータのなかにある2曲から3曲のアリアには通常オブリガート楽器が付いているが、その楽器はヴァイオリンだったり、フルートだったりオーボエだったりして、常に同じ楽器ということはないのが普通だが、この35番のオブリガートはどれもオルガンということになっている。ストップの多いオルガンであれば、色々な音色に変えることも可能だが、ここ本郷教会のオルガンは小さなものなので、変化には限界がある。そこで私は考えた。まずチェンバロを使うこと、そしてヴァイオリンの導入である。」次に「バッハの時代には、バッハをはじめ一人が色々な楽器を演奏するのは当たり前であった。バッハは鍵盤は勿論弦楽器も非常に巧みであったし歌も歌えた。この鍵盤奏者の奏する弦楽器、弦楽器奏者の弾く鍵盤という当時は普通であった演奏家の在り方が現在では専門化が進み、なかなかこのような演奏家にも演奏にも出会うチャンスがない。しかし見よ、ここに山口眞理子というオルガンとヴァイオリンの両方が演奏出来る人材が現れた! 今日は彼女の演奏で先に述べたことを実際に体験してみようではないか。」チェンバロがフォルテピアノに変ったわけについて詳しい説明はありませんでしたが、武久氏はジルバーマン・スタイルのフォルテピアノを指して「この‘チェンバロ’と言っておきます。当時は‘フォルテピアノ’という名前は無かったので」とのこと。チェンバロと思って聴くとピアノ、ピアノと思って聴くとチェンバロという感じのこの‘フォルテピアノ’は、客観の世界にうっすらと抒情の雲がたなびく感じで、私は個人的には歌いやすく好きな音のひとつです。

 廣田牧師の聖書朗読(マルコ7;31-37のイエスの奇跡についての驚きが述べられた箇所)に続いて第1部のシンフォニアはオルガン・オブリガート+弦楽、通奏低音はファゴット、チェロ、コンバス、フォルテピアノで始まりました。第2曲アリアのオブリガートはフォルテピアノに、レシタティーヴォを経て第4曲のアリア、このアリアはオルガンとアルトのみ、演奏者2人でどこでも歌える曲なので、私自身は遥か昔、ヘアフォルトの教会音楽学校時代から、ドイツのあちこちの教会で歌っていた曲でした。オルガニストも今は亡きアルノ・シェーンステット、ペーター・ラロフの各氏をはじめ持田昌子(現・クロイツ教会オルガニスト)さんなどなど。歌の代わりにオーボエ・ダモーレでオルガンと合わせている演奏も偶然Bsで見たことがあります。

 話をもとに戻します。この第4曲、私たちはオルガン・オブリガートのパートを山口さんのヴァイオリンで、あとはアルトと通奏低音という組み合わせで演奏しました。

 第2部のシンフォニアは原曲(もともとこの35番はパロディ・カンタータ)の独奏楽器と推測される「チェンバロ」(実際はフォルテ・ピアノ)で演奏、レシタティーヴォを経て終曲はオルガン・オブリガート+弦楽+アルト・ソロ、この曲はなかなかアクロバットで非常に愉快でした。それにつけても、山口眞理子さんは5年前から弾きたかった曲とのこと、こういう願いが叶う日は本当に嬉しいものですね。私とて同じです。35番の全曲を歌えたらと希ってから45年、やっと、やっと、やっとの出来事でした。


■ 2010/09/16 シュッツ<白鳥の歌>9/17(金)午後7時 東京カテドラル聖マリア大聖堂

 たった今、<白鳥の歌>最後の練習が終わりました。明日はいよいよコンサートです。感嘆、感動に明け暮れた練習の日々でした。人間の世の中にもこんな時空が許されていることを不思議に思いつつも、ひょっとして天国とはこんなところ?と思うような瞬間が何度もありました。お時間がおありでしたら是非お出かけ下さい。

Read more...


更新