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ムシカWeb通信


■ 2007/05/03 瀬尾文子 その五

 コンサートのない夜は、夕食後あるいは練習後、みんなで食堂に集まって、ワインを片手におしゃべりをしました。ある晩は、ゴットフリートが50歳の誕生日を迎えたときに、カントライの皆がプレゼントしたという、手作りのボードゲーム「Chorreise(合唱団の演奏旅行)」で遊びました。ちゃんとルールの説明書きまでついています。このゲームでは、合唱活動と同じように、だれでも、そしていつでも、参加することも抜けることもできます。そして、最後にはだれかが勝つという競争ではなく、全員で協力してあることを目指します。その目的とは、ポイント(ビー玉)を集めることです。ポイントが一定数集まると、それは演奏旅行を成立させるためのいろんな条件が揃ったことを意味し、めでたく演奏旅行が「成功」したことになるのです。みんなで順番にサイコロを振って、人形を進めていきます。ゴットフリートの人形は、髪の毛が、以前みんなで切ってあげたという、ご本人の本物の髭でできていました(少々不気味)。そして、赤いマス目に来ると「Erscheinungen(出来事)」というカードの山から一枚とって、そこに書かれていることを大きな声で読みます。それは、かつて演奏旅行中にあった、いろんなエピソード(実際の出来事)です。たとえば、「どこどこの教会で、本番の時刻になった。しかし、客席にはたった二人しかお客がいない。だが、まあいい。我々はどうせ大してうまくは歌えない。」(ここでみんなはワッと笑う。)このカードは、ポイントがマイナス2点です。また、「?」のマス目に来ると、問題の書かれたカードの山から一枚めくって、その質問に答えなければなりません。たとえば、「ある練習で、あなたの隣のAさんが、ひどく聞き苦しいまちがいをしながら歌っている。どうするか?」カードを引いた人は、例えば「しらんぷりをする」とか「そっと注意してあげる」などと答え、ゴットフリートがそれに対してポイントをあげたり、引いたりします。なかには、古いメンバーしか答えを知らないような質問もありますが、答えにつまる人がいると、周りの人が口々にヒントをあげます。私の引いた質問カードにはこうありました。「ある練習で、ゴットフリートがテノールに向かい、声を荒げて言った。『低いっ!まるでしぼみきったアコーディオンだ!』さて、誰に向かってか。」テノールには、アマチュア・アコーディオン・クラブに入っている双子の弟ホルストがいます(兄はバス)。以前誘われて発表会を聴きに行ったので、知っていました。答えはホルストです。ボードには、ゴットフリートの楽しい名言の数々が書かれ、見ていてあきません。最後は無事、ポイントがたまって、成功裡に終わりました。(続く)

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_ 長崎麻子 [お久しぶりです、本郷教会のユビキタスバッハの演奏会でご一緒したことのあるファゴットの長崎です。 ひょんなことからこ..]


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