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ムシカWeb通信


■ 2010/11/26 <レクイエムの集い>2010

 なんというコンサート! 11/19のカテドラルの大聖堂にメンデルスゾーンが、バッハが、そして、「初めまして!」と親しげな笑みを浮かべたドヴォジャークがやって来たのです。彼らが普段から仲が良さそうなのはすぐに分かりました。

 ドヴォジャークの《聖書の歌》は予想した通り素晴らしい時間となりました。チェコ語の醸し出す得も言われぬ深み、暖かさとドヴォジャークの構えたところのない、それでいて真摯な音楽、歌らしい歌に一同あっけにとられ、捉えられ、じわじわとやって来るぬくもりに身を委ね、心を静かに開いて行ったのでした。

 パイプオルガンは音栓のコンビネイションによって多彩な音色を作り出すことが出来るので、奏者が変ればこれが同じオルガンかといったスリル満点の楽器です。今回特に感銘を受けたのは、ファンダステーネ氏の声と椎名さんのオルガンの音色とが同じ源泉から生まれたように調和していたことでした。ファンダステーネ氏も思ったような演奏が実現し、大層喜んでおられました。

 メンデルスゾーンのすっきりした頭脳を全開で見せてくれるような透明感溢れる音楽はいつものことですが、今回はオルガンソナタの重厚感が加わり、これまで巷でなんとなく脇に置かれがちだった彼の音楽の再認識には充分な役目を果たしたと思います。

 バッハのモテットはシュッツ合唱団の歴史の中では最も古いレパートリーです。難易度は最上級といってよいと思います。今回はすべてア・カペラで歌いました。いつものように、合唱団員の一人ひとりが持っている声の質(たち)をよく聴きながら、各曲の編成が割り当てられていました。また、バッハの時代のテラッセン・デュナーミクと呼ばれる階段状に変化する強弱も、この声の特質で分けられていたので、「徐々に」ではなく、その変化がオルガンのストップを順次減らしていくような、文字通り「階段状」の変化となって現れ、「nichts 何も無い」との言葉を表現するピアニシモは、あと一歩で「無」になりそうな、今まで聴いたこともないような小ささでした。あのピアニシモをどうやって導きだしたのかをあとで指揮者に尋ねましたら、その箇所の5声は、SI 巽瑞子、SII 山田みどり、A 影山照子、T 依田卓、B 石塚正 だったとのこと、思いがけない組み合わせでしたが特筆すべきアンサンブルでしたので、ここに記録しておきます。

 メンデルスゾーンの宗教合唱曲は作曲者のまことに純粋な祈りを感じさせる音楽です。的確な解釈と充分な練習ののちには、どこまで自己放下が可能か、にかかってくるように思いました。ソプラノソロと合唱、オルガンによる《讃歌》では私自身もソロで参加しました。準備途中で風邪を引き苦戦しましたが、ソロの歌った歌詞を合唱がそのまま返してくるスタイルでしたので、自分の演奏が鏡で映されたように合唱に反映していくさまを観察することが出来ました。良い旗が振れた時に良い反応が返ってくるのは当然としても、私がひどい声を出せば・・・・?

 

 さて、もう日が迫っておりますが、11/28日曜日は第1待降節です。午後6時より上荻の本郷教会でソリ・デオ・グローリアが開かれます。バッハの待降節第1主日のためのカンタータ62番《いざ来ませ、異邦人の救い主》ほかを演奏致しますので、是非お出かけ下さい。

[東京都杉並区上荻4-24-5 TEL:03-3399-2730 JR西荻窪より北に徒歩10分]


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