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ムシカWeb通信


■ 2012/06/16 <倍音>武久源造『ドイツ通信』 その4 (6/3)

 今回、ずっと私が感じているのは、自分の体が、場所に合わせて変わる、という不思議です。

 つまり、今私が感じている響きは、ドイツの空気と水と地磁気の具合などによって、そして、何よりも毎日ドイツ人たちと真夜中まで話しこむことによって、ごく自然に感じられているように思う。だから、これをそのまま、日本に持っていくことはたぶん出来ないのでしょう。

 しかし、歌手のように、自分の声で響きを出さなければならない場合、どうなのか。

 そこに、いわゆる「テクニック」というものが、問題になってくるのだろうと思う。自分の専門にしても、日本では、たとえば今私が使っているような、特別なチェンバロを必要とする。しかし、ドイツでは、いわば常識的なチェンバロでも、十分以上に機能する。

 しかし、この常識的なチェンバロをそのまま日本に持って言っても、つまらない音楽しかできない。少なくとも私には、そう思えてならない。

 そんなことを言うのなら、ドイツで音楽活動をしたらどうだ、と昔はよく考えたものだけど、やはり、神は私を日本に生まれるようにされた。そのことの意味を、まだ十分には果たしきっていないようにも思える。しかし、同時に、もう自分は地球の人間で、どこだろうと、そこに合った音楽をすればいいのだろう、というような気もする。

 さて、これは、もうしばらく勘考を要する問題です。


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