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ムシカWeb通信


■ 2012/06/13 武久源造『ドイツ通信』 その3(後半) (6/3)

 そして、今日は、ドルトムントで行われている合唱フェストに行ってきました。合唱といっても、ほとんどはゴスペルやポップス。そして、フォーク・ソングです。

 朝から、町のメイン・ストリートが歩行者天国になっていて、野外ステージや教会を含めて15の会場があり、20分交替で、あちこちから駆けつけた様々なコーアが歌う。夜には、有名なコーアの、大きなコンサートもある、というもの。

 最初に聴いたのは、お婆さんたちの合唱、

 彼女たちが歌っていたのは、アメリカのゴスペルだったけれども、それを聴いていて、何か、下腹の辺りから込み上げてくるものがあり、それが、喉のところに来たとき、思わず、叫びそうになり、その叫びは無理やり押し殺したんだけど、それが眼のところに来たとき、不覚にも涙をこぼしてしまいました。

 それは、いったい、何だったのか。

 一生懸命考えました。

 答えは、やはり、倍音列です。

 倍音の力が、私の太古の記憶を呼び覚ましたかのようです。

 それは、ドイツに到着した最初の日に、トイレを流す音に倍音を聴いて以来、私の体が、調律されていたせいかも知れません。

 合唱フェストは、音楽的には、まあ、大したことはありませんでした。半分以上は、アメリカナイズされた音楽でした。その点では、日本と全く変わらない。

 ただ、それでも、ドイツの合唱の力は、まだかろうじて失われていない。お爺さんお婆さんから、子供たちのコーア、青年5人組のアカペラ・グループなどもある。歌の技量も様々。しかし、そのハモり方とリズムの作り方が、実にいい。

 あちこちの店で、いろいろなビールを飲み、ソーセージをかじりながら、一日中飽きもせずに、無数の合唱を聴いてきました。


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