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ムシカWeb通信


■ 2009/09/07 ミネアポリスにあった!

 本と楽譜、書類、わけの分からない紙で足の踏み場もない我が家。この家の中で私はいつも探し物をしています。「部屋の片付け方」「情報の整理法」「ドイツの主婦の掃除の仕方」などの本も混ざっているのが笑えます。ハイ、私は字を読むのは趣味ですから、これらの本も読了し、頭には入っているのですよ。そうそう、アグネス・ギーベルには鍋の磨き方から雑巾の干し方まで習いました。手取り足取りです。

 わたしの父方の祖母はキチンとした人で、わたしのだらしなさを全部私の母親の教育のせいにし、「弓子の躾けは私がします」と言って母を泣かせていました。長い廊下の雑巾がけなどは、祖母の集中し切った眼を背に受けて毎日させられました。おかしなことに、この祖母とギーベル先生は実に良く似た性質で、なぜか眼の光り具合までそっくりなのです。ケルンのギーベル先生のお宅で掃除の仕方を一から教えられたときには、祖母が化けてきたのかと思いました。

 これほどの教えを受けても、私の家は一向に片付かず、探し物をしていても同情してくれる人など一人もいません。それどころか、「だから言わないこっちゃない」と馬鹿にされるだけなので、黙って探すことにしています。

 「あったあ!」なんとミネアポリスの桃子の家。ピアノの椅子の蓋を開けると、私が長年真剣に探していた譜面があるではないの! 『イタリア恊奏曲 バッハ作曲』と表紙に書いてあるピース版で京都の十字屋というところから昭和17年4月17日に出版された、定價金壱圓 の楽譜です。趣味でピアノを弾いていた亡き父のもので、「原典版を」と仰る先生がたには一喝されそうですが、なんと、ハンス・フォン・ビューロウの校訂です。私はこの譜面でさらったので愛着があったのですが、見えなくなって久しかったのです。そう、私は口には出さねど、捜してさがして、サガシテ探していたのよ。桃子はあっけらかんと「使うなら持って帰って。」 

 というわけで、この譜面を抱えて9/9には帰国します。


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