トップ «<レクイエムの集い> 最新 花婿「イエス」»

ムシカWeb通信


■ 2008/11/25 バッハ・カンタータ140「目覚めよ、と呼ぶ声あり」

 2008年11月23日は、教会暦でいうと三位一体の祝日後第27の日曜日です。バッハの教会カンタータはこの教会暦に沿って、その日に定められた聖書の朗読箇所を解釈し、音楽によるメッセージとして作られたものです。三位一体の祝日はその年の復活祭から数えて8週目の日曜日で今年は5/18でした。三位一体の祝日後第一の日曜日(5/25)から降誕祭から4週遡った待降節第一日曜日(11/30)の1週前の日曜日(11/23)までの日曜日を今年は27回迎えました。  

 長々しい前置きとなりましたが、私の言いたいのは、この第二七の日曜日というのはその年の復活祭の日付によって迎えられたり迎えられなかったり、微妙なラインだということなのです。ですから、第二七の日曜日のために作られたカンタータは、教会暦に沿って演奏しようとしても、出来ない年があるのです。そう、有名なバッハ・カンタータ第140番は三位一体の祝日後第27の日曜日のための曲なのです。無論このような暦を無視して名曲路線を貫けば毎日だって演奏出来ますし、それも一つの曲に対する愛情表現ではあるのかも知れません。しかし各日曜日に朗読される聖書箇所は毎回異なり、バッハはその言葉を軸に作曲しているのですから、単に名曲や人気の曲のみに関心を寄せるのは勿体ないと思うのです。バッハがその聖句から何を感じ取ったか、何を重大と思い何を無視したか、を探ることは、演奏解釈の根幹だと思います。ここから音色やテンポ、フレージング、アーティキュレイションなどが明らかになってきますので、範例は多いほど良いと考える次第です。

 日本のように、キリスト教というと「クリスマス」ぐらいしか思い浮かばない国にあって、教会暦に沿ったという活動がどういう意味を持つか、はまた別の議論の場に譲るとして、演奏の現場では、暦は非常に有効であり良い働きをしています。キリストの生誕を基準とした西暦何年、という表示に始まり、重要人物の生誕何年、没後何年は常になんらかの記念行事が行われています。年間の行事でもクリスマス、受難節、復活節、聖霊降臨祭、そして今日のテーマである三位一体の祝日にはバッハに限らず数多の素晴らしい作品が遺されていますし、キリストの生涯とは直接関係がありませんが、11/2 の万霊節はレクイエムにふさわしく、またその年の教会暦最終日曜日(因に教会暦最初の日曜日は待降節第一の日曜日)は永眠者を記念する日、と定められています。教会音楽は、バッハのロ短調ミサは例外ですが、そのほとんどが機会音楽なので、常になんらかの行事と関連しています。

 さて、実に長々しくくどい文章になってしまいましたが、本当に言いたかったのはただ一つ、今度の土曜日11/29土6時のSDGのひとときは、バッハの教会カンタータ第140番「目覚めよ、と呼ぶ声あり」に捧げたいのです。そして、教会暦最後の永眠者を記念する日でもありますので、シュッツの「死者は幸いなり」も歌いたいと思います。どうぞ皆様、お時間とご興味がおありでしたら、是非東京上荻の本郷教会にお出かけ下さいませ。

 サイトのトップ画像は、このカンタータ140の歌詞を題材とした蘆野ゆり子のカリグラフィーです。11/23から1週間掲載されますので併せてお楽しみ下さい。

 

 

 

 

 


編集