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ムシカWeb通信


■ 2007/09/13 ボストン着

例によって最後の1分まで気の抜けない状態でやっと家を出る。太郎夫婦が車で上野まで送ってくれるとのこと、大分ほっとする。デトロイト経由でさっきボストンに到着。ボストン時間午後7時、茜がベビーシッターに連れられて迎えに来てくれた、はいいが私の顔を覚えていない! 大ショック! 明日からが心配。

空港からバスに乗る。2ドルと聞いていたので、2ドル払おうとしたら「ひょっとして65歳以上? そうなら60セント」と車掌に言われ有り難かったがちょっとショック。さらに地下鉄に乗り換えるが、これはバスの降車場とメトロの乗車場が同じで助かった。地下鉄を降りる。駅の名はなんと “HARVARD”。

ベビーシッターのクリスティンは愛想の良い笑顔、金髪、小柄、と全くどこからみても普通のヤンキー娘だが、聞いてビックリ、彼女はすでに宗教学を修め今はハーバード大学でイスラム原理主義の研究をしており、将来この分野ではトップクラスの学者になることが教授陣からも保証されているとのことだ。勿論ギリシャ語、ヘブライ語に精通し、自身はルター派のクリスチャンとのこと。

私は飛行機の中で佐藤優の「国家と神とマルクス」(太陽企画出版)を読みながら一神教と多神教について思いを巡らせていたので、この出会いには驚いた。

いろいろ訊きたいことがあるが、私がここにいる間は彼女は来ない、ということに気付く。

日本国家、キリスト教、マルクスの言説の三つを絶対的なものとして並存させ、我が国の外務省きっての情報分析官といわれた佐藤優は、国家によって作られた事件・・鈴木宗男とつなげて国策捜査を行う・・に巻き込まれ、512日間東京拘置所に入れられていた。その間の記録「獄中記」(岩波書店)も、全く飛んでもない面白さ、その上一行読むごとに元気になるという不思議なエネルギーに充ちていた。

日本という国でキリストの音楽を演奏する、ということにまつわる困難と日々戦うのがわたしの仕事でもあるので、普段は関係書物を読み、堀を固めることにエネルギーを注いでいる。スコアを読む時間の数十倍の時間は費やしていると思う。因に、楽譜は書物とは違い絵とか地図のようなものなので、見開きの2ペ−ジがどんな音楽かはあっという間に分かる。速読というのもどうも似たようなものらしい。佐藤優は速読法をロシヤでマスターしたとのことだ。

現在の私のテーマは旧約の預言者<エリヤ>である。この人物を描いたメンデルスゾーンのオラトリオを演奏することになったからだ。このボストン滞在を<エリヤ>の勉強に当てたいのだけれど、茜がどれくらいお利口さんにしているか・・・。なにしろ彼女の今日の表情は「変なお婆さんがいる、見ないようにしよう」でしたよ。


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