ブラウンシュヴァイクでの《天地創造》、聴衆6000人まで行かなかったようですが、それでも次から次へと人が席に着き、空席が埋まって行く様子は見ていて楽しいものでした。入り口のチェックは非常に厳しく、爆弾が紛れ込み火災が起こった時の対策には万全を尽くしていました。
プログラム解説では、初演はハイドンが指揮をし、鍵盤はサリエリが弾いた、とか、フランツ皇帝がハイドンに、《四季》と《天地創造》ではどちらがお奨めですか、と尋ねたところ、「それは《天地創造》ですよ。なにしろここでは天使が口をきき神について語るのですから。」との答えだったとか面白い事が沢山書かれていました。
音楽が始まり快調に進みます。良い演奏のあとには拍手が起こるという、オペラや歌舞伎のような雰囲気で、普段慣れ親しんだ「オラトリオ」のコンサートとは大分趣きは違いましたが、これはハイドンの《天地創造》の持つ分かり易さ、親しみ易さにあるのでしょうか。最初の何人かの方々の挨拶のなかに「ひょっとしてフェミニズムからは文句が出るかもしれませんが、この曲は実に誠に素晴らしく・・云々」というのがあり笑ってしまいました。これは第3部でアダムとイヴがこの世に誕生した時、イヴがアダムに向かって「あなたの意志は私の掟、主がそう定められたのです」と語る台詞を指しているのでしょうか。しかし後に続く二人の愛の2重唱は音楽も演奏も絶品で後には大きな拍手が起こりました。
カーテンコールはソリスト、オケの奏者に続いて各合唱団の指揮者が壇上に呼ばれ深紅の薔薇が1本ずつ贈られました。太郎も私もこのお褒めに与り、ここで手渡された薔薇一輪は今迄に贈られた沢山の花束の中でも強く心に刺さり、私にとっては50年の合唱指揮人生のハイライトだったかも知れません。
演奏会後のパーティはまたまた思いがけないものでした。南アフリカナミビアの人たちが嬉しさの余り故郷の歌と踊りを始め、回りにいた人たちも皆その輪の中に入ってきたのです。私は鼻こそ小さかったとはいえ、どこからみても子象のような歌い手さんと手を取り合って歌い踊り実に生まれ変わった気分でした。
今日はあと10分でホテルを後にしますので、この先はまた後ほど。皆様、お元気で!!