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ムシカWeb通信


■ 2015/05/14 第四十七回 八媛会書展

 一雙行李向西風。

 腰剣肩書意気雄。

 唯識小春温暖日。

 山川自在観紅楓。

 一雙の行李西風に向かう

 剣を腰に書を肩に意気雄なり

 誰か知らん小春温暖の日

 山川自在に紅楓を観んは

 この七言絶句は我が曾・曾祖父尾高藍香が従兄弟の澁澤栄一と信州へ藍の売り込みに行く途中で詠んだものです。詩作に夢中になってゆめ商売を忘るるなかれ、と二人の父親に釘をさされていたにも拘らず、二人は気が付くと興に乗ってこのような詩を作っては楽しく過ごしたそうです。藍香27歳、栄一は17歳だったとのこと。セールスをしながらこのような詩を作っていた時代が日本にもあったのだと思い感慨無量、とは山本七平の感想です。

 と、ここまでは前置きで、本文はここからです。なんとわが先輩で書の達人であられる田代鶴川女史がこの漢詩を書にして下さったのです。書展は『八媛会書展』5月16日(土)の17;30まで京橋のギャラリーくぼた 2階で開催されています。私は昨日拝見し、その暖かく格調の高い書、書、書に囲まれ、筆で書かれた文字が、また言葉がこれほどに人の心に沁み通り、身体をも緩めてくれるものか、と非常に驚きました。そしてこの藍香の意気に触れ、先祖が直に語り掛けてくれている、という思いに充たされ、言うに言われぬ感動を覚えました。このような類いの喜びは生まれて初めてのもの、しんみりと、静かに、心の深いところでなにかが揺れています。


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