柴田南雄《宇宙について》では、グレゴリウス聖歌から12音風のスタイル、諸民族の民謡風宗教歌、さらに生月島に今も残る隠れキリシタンの「おらっしゃ」、そして最後には「華厳経」とパノラマのように多岐に亘る歌がくり広げられます。これらすべては同一平面上に並べられ、重ねられ、いつ誰がどこで歌っているのか定かではないにせよ、確実なことは一人ひとりの人間が、真剣に「歌」に向き合い、精魂込め、全身を使って声を上げるという時空が出現するということです。
ここ何回か第2章<東アジアの天地創造の神話>を勉強しています。日本書紀の現代語訳を女声合唱が歌い、同時に男声合唱は同じテキストを古文で歌います。12音音楽を歌うとは、主音とか調性といった感覚を捨て去って、等間隔の半音階をマスターし、どの瞬間にも一つひとつの音が独立して聴こえるような発声をするということですが、普段はギョッとする増4度が一番まともに聴こえるというのも奇妙な面白い感覚です。