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ムシカWeb通信


■ 2013/10/11 ルドルフ・マウエルスベルガー《ルカ受難曲》

ご報告(3月〜9月)

2013年3月22日(金)午後7時

東京カテドラル聖マリア大聖堂

ムシカ・ポエティカ《受難楽の夕べ》

シュッツ《モテット〉

ルドルフ・マウエルスベルガー《ルカ受難曲》

シュッツ合唱団・東京  指揮:淡野太郎

 今年はシュッツの《カンツィオーネス・サクレ》から4曲、《ガイストリヒェ・コーアムジーク》から3曲のモテットにマウエルスベルガーの《ルカ受難1889年にザクセン州マウエルスベルクに生まれたルドルフ・マウエルスベルガーは、1930年、ドレスデンのクロイツ教会のカントールに就任、1971年他界するまでその任にありました。ドレスデンは1945年2月13日の空爆によって廃墟と化し、無論楽譜庫も焼失します。マウエルスベルガーは受難節を迎えても楽譜の無かった聖十字架少年合唱団のために、1947年1月、たった12日間で《ルカ受難曲》を仕上げたのです。

 福音史家もイエスもソロではなく小アンサンブルで歌われ、場面ごとにコラールが配置されたこの曲は、生まれるべくして生まれ、人が共に声を挙げたいと願った時に響き渡った音楽でした。

 すでに一昔前の話になりますが、1985年はシュッツ生誕四百年、バッハ、ヘンデル生誕300年という華々しい記念の年、われらがシュッツ合唱団も旧東ドイツ芸術省からの招きに加え、西ドイツでも歌うこととなり、3週間に亘って東西ドイツ13都市で公演という一大演奏旅行が決行されたのです。

 ドレスデンではゼンパー歌劇場が再建され、その披露公演のシリーズにシュッツ合唱団のコンサートも組み込まれていました。シュッツのモテットと柴田南雄の《宇宙について》をオペラ座で歌うという珍しい体験の後、ドレスデンの音楽学者で批評家のマティアス・ヒーアマン氏が数冊の楽譜を下さいました。その中の一冊がヒーアマン校訂のマウエルスベルガー作曲《ルカ受難曲》だったのです。

 この曲の日本初演に漕ぎ着けたのはそれから9年後、1994年3月のことです。同じ年の9月、国際交流基金の援助を受け、ドイツのゾースト市で開催されたシュッツ祭に参加することとなりました。プログラムを考えていたところ、旧東独出身のカッセルのカントールが、ドイツではなかなか演奏されないこの曲を是非聴きたいと言われ、カッセルのキルヒディトモルト教会で演奏することが決まり、さらにドレスデンのクロイツ教会でも歌うことになったのです。私たちはこの《ルカ受難曲》を彼の地で演奏、R.マウエルスベルガー指揮、聖十字架少年合唱団による初演から47年が経っていました。

 物語はもう少し続きます。

 去る9月19日〜22日、今年の国際ハインリヒ・シュッツ祭がヴェネツィアで開催されました。かのサン・マルコ大聖堂ではマンフレッド・コルデス指揮ブレーメン・バロック・コンソートがジョヴァンニ・ガブリエリとシュッツを演奏、「イタリアの視覚美の中で、北の国の緻密な音楽造りは、ぴったりと調和していました。」とは参加された荒川恒子先生のお言葉です。

 各国の活動が報告される場で荒川先生が、今年の受難節に東京ではシュッツ合唱団がルドルフ・マウエルスベルガーの《ルカ受難曲》を演奏したと話して下さったところ、一人の年配の方が嬉しさ余って先生に声をかけられ、ドレスデンの聖十字架少年合唱団のメンバーであったこと、戦後すぐに演奏されたこの曲の初演に参加したと語られ、私たちの演奏の録音が聴きたいと言われたそうです。1947年の4月1日、ドレスデンのカトリック教会であるヘルツ・イエス教会でこの作品を歌った少年の耳に、今、私たちの演奏はどのように響くのでしょう。一つの曲を巡って歴史がダイナミックに動き、今そのただ中に生きていることを改めて感じました。

 毎日新聞紙上には「イエスの声」と題する梅津時比古氏(現・桐朋学園大学学長)による記事が掲載されました。このエッセイは同氏の近著、音楽のクリティカルエッセイ『神が書いた曲』毎日新聞社 に収められています。                                            

2013年5月12日(日)午後1時半〜4時半

ヒルサイド・プラザ(代官山)

メンデルスゾーン基金友の会「春の集い」

〈ゲーテとイタリアとメンデルスゾーン〉

講演:星野宏美 演奏:ゲーテ他の作詩によるメンデルスゾーン姉弟の歌曲の紹介 淡野弓子と「ムシカ・ポエティカ」の歌い手たち  

独唱:永島陽子/淡野太郎/淡野弓子 

二重唱:柴田圭子/依田卓 ピアノ:山形明朗

合唱:メンデルスゾーン・コーア/ハインリヒ・シュッツ合唱団・東京 指揮:淡野太郎

 この集いにつきましては過日このblogでご報告いたしましたので、ここでは割愛させていただきます。                          

2013年6月16日(日)午後6時

クロイツ教会(五反田)

 エクメーニッシェ・カントライ(ドイツ語福音教会・超教派カントライ)「夏のコンサート」

1月から共に練習を始めた「カントライ」の夏のコンサートはメンデルスゾーンの《讃歌》「わが祈り聴きたまえ」、「雲雀」「鶯」他の《合唱歌曲》にバッハの《コーヒー・カンタータ》、《カンタータ147》よりコラール「主よ、人の望みの喜びよ」というプログラムで開催されました。

カントライのメンバーにシュッツ合唱団、メンデルスゾーン・コーアの有志、ユビキタス・バッハの器楽奏者、市岡正適、奥村琳、川畑淑子、谷口勤、大軒由敬、兼利剛也、山口眞理子の諸兄諸姉、それに依田卓、淡野桃子、淡野太郎のソロ、持田昌子さんのオルガンが加わって、初夏の喜びに溢れたコンサートとなりました。ツィーメ・ディードリヒ牧師はじめ教会員の方々にも喜んで戴け、まずはホッとした次第です。                   

2013年7月8日(月)正午/午後7時

ミューザ川崎 シンフォニーホール

オルガンと合唱コンサート

オルガン:椎名雄一郎   ソプラノ:淡野桃子 

ハインリヒ・シュッツ合唱団・東京 指揮:淡野弓子

ラインベルガー/メンデルスゾーン/バッハ

大オルガン、大ホールという空間で、シュッツ合唱団のような小編成の合唱団がどこまで歌えるのか非常に心配でしたが、6月中旬にすでにホールでのリハーサルがあったため、どのような声を使ったら良いかを充分に考え、練習する時間に恵まれたのは幸いでした。

ランチ・タイムには女声合唱+オルガンのラインベルガー《ミサ曲イ長調》を、夜間にはメンデルスゾーンの《讃歌》、バッハの《イエス、わが喜び》を歌い8は歌わずにオルガンで《イエス、わが喜び》によるファンタジア、9〜11を合唱でという演奏を試みたところ、常にコラール旋律を追いながら疲れることなく鑑賞して戴けたようで、嬉しく思いました。いつも遠方からコンサートにいらして下さる野本元様より「一陣の涼風を感じさせる演奏、それを川崎で聴ける喜びを満喫しました。」とのご感想を戴きました。私たちも演奏の場を近隣都市に少しずつ広げて行きたいと思っているところです。                           

〈Soli Deo Gloria〉復活祭〜夏〜秋

日本キリスト教団本郷教会 [聖書朗読 宮崎 新]

シュッツ合唱団&メンデルスゾーン・コーア/ユビキタス・バッハ 指揮:淡野太郎

3・31 (日) 復活祭/4・20/5・25/6・9/6・29/7・21/9/29 以上7回のSDGとサマーコンサートとにがすべて無事終了致しました。主に感謝! そして皆様、有り難うございました。

 2013年10月

               ムシカ・ポエティカ  淡 野 弓 子


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