皆様へ 秋のご挨拶を
どこからともなく漂う金木犀の香り、長かった夏も去り、もの思う秋となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
6月の初め、ミネアポリス在住の長女桃子が孫2人を連れて日本にやって参りましておよそ1ヶ月滞在、6歳の茜は日本の小学校を体験しました。
8月には上鷺宮のスタジオ兼書類や録音テープの保管所(シュッツ合唱団45年分、ムシカ・ポエティカ29年分)であった小さな家を引き上げ、荷物を自宅と松崎に移すという大事業を敢行、汗と涙にまみれて完遂、と言いたいところですが、自宅の混乱は終焉の見通し立たず、いまだにひどい有様です。
3月から7月にかけてはコンサートに加え、平凡社新書『バッハの秘密』の出版という私にとっては初めての体験がございまして、なにか普段とは違う渦に巻き込まれた感がありました。
さて、早速ですが、まずは次回コンサート〈レクイエムの集い〉のご案内を——
2013年11月4日(月・休)午後3時
所沢市民文化センター ミューズ アークホール(大)
〈レクイエムの集い〉2013
メンデルスゾーン《エリヤ》 エリヤ:浦野智行
メンデルスゾーン・コーア/シュッツ合唱団・東京/ユビキタス・バッハ 指揮:淡野太郎
1847年の春ごろからフェリクス・メンデルスゾーンは体調をくずし、10月に頭痛、運動困難、不整脈などが起こり、10月末にはさらに悪化、11月3日には激しい頭痛、譫言の末意識を失い11月4日夜亡くなりました。38歳でした。
恵まれた幸せなフェリクス、とはどこにでも記されていることですが、彼は想像を絶した才能ゆえに引き起こされる極度の興奮状態に陥ることがしばしばあり、それも彼の夭折に関係しているのでは、と言われています。
1840年代の初め、《エリヤ》の作曲に取りかかる前のメンデルスゾーンは、この世の不条理に巻き込まれ鬱々とした日々を送っていたのですが、預言者エリヤの放つエネルギーに触発されたのか、1844年、突然作曲に取り掛かり、46年には英国バーミンガムでの初演に漕ぎ着け、爆発的成功をおさめます。
歿後166年記念となる11月4日、私たちは〈レクイエムの集い〉において彼のオラトリオ《エリヤ》を演奏することとなりました。偶像崇拝とは—— 真なる神への信仰とは—— とのエリヤの問いかけは、大昔の異国の物語ではなく、今、ここで、我々が真剣に考えねばならぬ課題です。バアル神への狂信に走った時の王アハブと王妃イゼベルに対し、預言者エリヤはあらゆる手段を用いて戦いを挑みます。エリヤのみならず登場人物一人ひとりが真正面を向いて語るこの作品を演奏するに当たって、我々も自らの立ち位置を明確にし、偽りのない響きに導かれんことを願わずにはいられません。
例年通り追悼なさりたい方のお名前をお待ち申し上げております。yumiko@musicapoetica.jp までお申し込み下さい。締め切りは10/24(木)です。(続く)