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ムシカWeb通信


■ 2011/05/31 「セディエ」学会発表終了

 長いご無沙汰をお許し下さい。セディエの<Vocal Art>全4巻の概要を日本声楽発声学会で発表することになったため、準備に追われていました。現在アメリカの大学図書館にも数える程しか残されていない書物です。論理的、科学的に述べられた発声に関しては第一級の文献です。しかし、その充実した内容にも増して驚かされるのはイタリア人セディエの用いた言語です。第1巻は英語、第2巻は1ページを縦に3行に分け、左から伊、仏、英と同じ事が3種の言葉で書かれているのです。第3巻はイタリア語、第4巻は再び伊、仏、英です。

 この本をじっくり読めるのはまたとない幸せですが、この幸せにもう一つおまけがついてきました。それは辞書です。齋藤秀三郎著 熟語本位『英和中辭典』という古い辞引が家にあったのです。初版は大正4年、1915年ですから、セディエの本が出た1880年代の英語には丁度良いのかなと思って使い出したところ、これが大当たり。齋藤秀三郎氏は指揮者齋藤秀雄氏の御父上ですが、その日本語訳がたまらなくすかっとしていて、訳した後の気持ちがシャンとするのです。只読むだけでも面白いので、気がつくと辞書ばかり読んでいたり・・・・。

 さて、発表用に準備した原稿はどう見ても3時間位かかりそうです。発表時間は正味25分、どこを残し、どこを切るか。

 まず髪を切りに行きました。いつも切ってくれる Tさんが「なんか本番があるんですか?」と訊いたので、髪を洗ってもらっている間ずっとセディエのメソッドについて喋りました。私が「こんな話を聴いた美容師さんは日本であなただけでしょうね。」と言いましたら、「ああ、なんて幸せなんだろう。それにしても凄い話ですね。」と言ったので嬉しくなってしまいました。専門外の人が感激してくれるなんて! 

 5/29(日)大雨。(やっぱり! これだけは避けられないのです。)厖大なエチュードから厳選の数曲と「声の明度のチャート」を参会者にお配りし、このチャートのもととなった研究をしたヘルムホルツを紹介し、セディエのチャートに基づくエチュードを解説しただけで時間となりました。あっという間でした。嬉しいことに、多くの方々がセディエの理論に驚き、共感して下さいました。今回はほんの序の口でしたので、いよいよ腰を据えてセディエの研究を進めたいと思います。


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