9/19のコンサートの総括をしないうちに、11/7の<レクイエムの集い>の準備に突入し、またまた大変な日々を送ってしまいました。ご無沙汰をお許し下さい。
今年はアイルランドからショーン・ライアンさんという笛の名人がホイッスルを聴かせて下さいます。共演はお馴染みの守安功さんと雅子さんです。アイルランドに伝わるラメントについて、守安さんが解説を書いてくださいました。そこにはさまざまな「死」の理由、状況が詳しく説明されていました。例えば、 ・敗戦の指導者の死 ・自らの死期を悟った作曲家が自分で作ったレクイエム ・泳ぎを知らぬ人々の溺死 ・出征する兵士を見送る女たちの訣れの歌 ・圧政のもとで起こった多くの人々の死などを隠喩を用いて歌う歌 ・処刑死 ・毒殺された悲運の指導者 ・死の瞬間の音楽 そして全世界の目の前で崩れ落ちたあのツイン・タワー・・・などなどです。
以前演奏したことのある柴田南雄作曲<人間と死>にも、人の遭遇するさまざまな「死」の状況が、これまた多岐に亘る古今の、また色々な国の文学から集められていました。その一シーン毎の、見知らぬ黄泉の国へ引きずり込まれるようなテキストを読むだけでも膨大なエネルギーを要し、「死ぬとはなんと大変なこと」と思い知らされたのを覚えています。
当日のプログラムは、バロック期からついこの間起こった出来事までが網羅されたもので、ホイッスル、フルート、コンサーティーナ、ハープが曲ごとに編成を変えて登場します。ショーンさんは歌も歌われます。
さてこのコンサートにはベルギーからテノールのツェーガー・ファンダステーネ氏もお見えになり、シュッツとバッハを歌って下さいます。シュッツが結婚6年目に最愛の妻を喪った時の哀悼歌、葬送のコンチェルト、それにバッハのカンタータ第8番「最愛の神よ、我の死するはいつ?」です。このカンタータ8番は非情なる「時」と、揺れ動き、迷いを主食とする我らが人間の「生命」を描いた傑作中の傑作! 「カンタータ8番を聴かずして生死を、また音楽を語るなかれ」と申し上げたいほどの、麗しくも冷酷な世界と「信ずること」の奇跡が歌い奏されます。
ジャンルの異なるものが組み合わされているプログラムですが、異種配合によってのみ立ち昇る薫りに期待しています。どうぞお時間がおありでしたら東京カテドラル聖マリア大聖堂へお越し下さい。11/7金 午後7時開演です。・・・S席:Sold out とのことですが、A席には余裕があります。
ファンダステーネ氏は前日の11/6木 午後7時より浜離宮朝日ホールでシューベルトの<冬の旅>を歌われます。ピアノはドイツからお見えになったシュテファン・ズィーバス氏、それに海老沢敏氏のお話があります。残席有りますので、こちらへも是非。
<冬の旅>連絡先:045-870-4771(T) 045-870-4772(F)