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ムシカWeb通信


■ 2008/04/25 Berkeley・初夏・Audrey

 サンフランシスコから地下鉄で30分、バークレイに着きます。カリフォルニア大学のバークレイ・レパートリーシアターという劇場でミネアポリスの<Theatre de la Jeune Lune>という一座が4月末〜6月中旬まで「フィガロ」を上演します。スザンナ役の桃子は Audrey(茜)を連れてここバークレイにやって来ました。私は前半の1ヶ月を茜と暮らす約束で、10日ほど前から劇場近くのアパートに居ます。

 バークレイもボストンと同じ大学町ですが、ボストンのスノッブな感じは皆無、実に屈託のない顔、かお、カオ・・・。陽の光が絶品で、これが日本にも照る同じ太陽とはとても信じられません。そのためか、野菜、果物、肉、卵、そしてパンなどなど・・・こんな味の食べ物が地上に? 素材そのものの味が数ランク上なのであります。歌い手も役者さんたちも異口同音に「ミネアポリスには帰りたくない!」

 茜は一歳半になりました。いまのところ耳では日英を解し、自分の返事は「Yeah!」あるいは「No!」、さらに「more!」「No more!」、そして「Happy!」といって喜びます。また、手話のDVDでさまざまな単語を身振りともども覚えたので,意思疎通には不自由しません。むしろ問題なのはおばあさん。桃子、太郎の育児をブラジル人のお手伝いさんに丸投げし、生後2〜3歳まで子供共々ほとんどポルトガル語で生活していたため、小さな子供を見ると口からはポルトゲースが・・・。特に「危ない!」「熱い!」などとっさの場合はポル語しか出てきません。これは本当に危ない。しかし脳みその引き出しとは面白いものですね。

 歌を歌ってほしい時は「うたえほん」(グランまま(!)社)という日本の童謡の楽譜付き絵本を持って私のところへ来ます。うれしいことに私、今は全部簡単に歌えるのでございます。白状すると、桃子、太郎に歌ってやったのはドイツ・リートのみでした。その頃私の頭の中は「西洋発声」を我がものとすることで一杯、日本の童謡はどう歌ったらよいのか分からなかったのです。しかし不思議な事に、西洋音楽との格闘60年の結果、日本語に対する恐怖心は消えました。ひょっとするとこれが最大の収穫かもしれません。

 茜は中国人歌手によるオペラ映画「蝶々夫人」にも夢中です。とくに「花の二重唱」になると画面に釘付けとなり、日に五回ぐらい聴き入っています。プッチーニと童謡、これがまた変にマッチして、続けて聴いても、重ねて歌ってもあまり違和感がありません。可笑しな発見です。  Y.T. 


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