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ムシカWeb通信


■ 2007/04/25 強烈なる体験! E の 舞台

 4月22日(日)

 敬愛する S 先生・・・ドイツ語全般、聖書、バッハ、ニーチェ、キルケゴールなどなど、多くのことを広く深く教えて戴いている三十年来の私の師・・・の家に生まれた末っ子の「E 」の会が、学習院大学の創立百周年記念会館というところでありました。

 ぶかっとした黒いズボンにピンクの長袖のシャツ、そして黒い上着を着たり脱いだり、野球帽をかぶったり、はずしたり、時に赤い着物を着たり、ひょっとこの手ぬぐいで顔を隠したり、靴も履いたり裸足になったりしながら、彼女は人生を語り、踊り、唄い、大道芸を披露したのでありました。「E 」の姿は、近頃はほとんど見かけない天然童子といった趣きで、足の裏からつむじ目掛けてどかんと野太いエネルギーが貫通し、その印象をひと言でいうなら「真っ当」であります。

 途中、E に呼び出され、彼女の「身体」とわたくしの「声」でコラボレーションをすることに。即興のヴォーカリーズですから何を歌ったのか良く覚えてはいませんが、〜〜〜さくら、さくら、弥生の空に、咲く、咲く、咲く、・・散る、散る・・、君が代は〜〜千代に八千代に、千代に八千代に・・キツネ、コンコンコンコン・・・など切れ切れの言葉と共に上へ下へ前に後ろに西に東にわたしは声を放ち、彼女は跳ね、転げ、腕を伸ばし、身をよじりまた震わせ、あるときは首のみを動かし、さらに全身を小刻みに振動させ・・・・無窮動寸前で、私は ‘ピ・タ・ゴ・ラ・ス’ の名前を ド/ソ/ド/ソ/ドと歌って目出たくthe End。 

 今、即興の機会は年に一度あるかないかですが歴史は長く、学生時代、芸大の旧校舎の一室で、塩見允枝子、水野修孝、小杉武久さんたちの「グループ音楽」の仲間に加えてもらって、闇雲に「声」を張り上げていたのが最初です。モダンダンスの伴奏を即興で歌ったことも思い出しました。

 ‘ピ・タ・ゴ・ラ・ス’と歌ったのは、プラトン、ピタゴラスの研究で知られ、さらに猫40匹と暮らす哲学者、SSさんが来られる、と聞いていたからでした。即興ののち、E が「SS先生のお誕生日を祝ってみんなで Happy Birthday を歌いましょう」と提案、歌い乍ら皆の声の方向を辿ると、なんと私のお隣にSS先生が!

 わたくしはそっと「失礼ですが、Uさんでは?」とお訊きしますと、「まあ、なんで? Uです。」「高校時代合唱部で一緒だったでしょ? 一年先輩の田中弓子よ!」「きゃー、うわー、えぇっ、なんで?」二人は抱き合い、髪を振り乱し、顔をくしゃくしゃにして50年振りの再会を祝いました。

 SS先生はEさんの恩師なのでした。淡野弓子→S先生→E→SS→田中弓子という繋がりです。わたくしはSSさんのネオ・プラトニズムの研究に以前から関心を持っており、いつかお訪ねして、いろいろ教えて戴こう、と密かに願っていたのです。「E」の不可思議なエネルギーの御蔭ですっかり元気を取り戻した記念すべき日でした。

 


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