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ムシカWeb通信


■ 2011/09/22 台風一過

 晴れ渡った青空の下、我が家の南正面、三角中央の屋根瓦が落ちていた。剥げかけていた雨樋の白ペンキもほとんど丸坊主で、錆び茶の肌が悽愴感を煽る。きのうのお昼前に「今日の練習は?」とメールを下さったYさんに「私と太郎は行こうと思っています」と返事をしたものの、夕方になって都内周辺の交通機関がほとんとストップしているとのことで、慌てて団員に連絡を始めたのが午後5時過ぎだった。なんとか全員に伝わり、クロイツ教会に練習はしませんとメール。これだけのことなのに、ぐったりしてしまい、折角の臨時休暇なのになにをする気も起こらなかった。3.11以来自然に翻弄され、かなりのエネルギーを消耗している。

 9/16(金)のコンサート、シュッツ作曲《ガイストリヘ・コーアムジーク1648》は特にこの曲には特別の思い入れのあるお客様方の暖かい心に囲まれ、お蔭さまで無事終了。この曲集は規模が大きく、内容が深く多岐に亘っているので、慎重に準備した。特に今回は各曲のテキストの語り手、詠み手の個人性を大切にした表現を心がけた。ヤコブ、イザヤ、ヨブ、ダビデ、黙示録のヨハネ、洗礼者ヨハネ、パウロ、そしてイエス・キリスト。さらにコラールの歌詞作者ルター、プロイセンのアルブレヒト、シャリングなどなど、その都度これらの人物に成り切って次から次へと歌うということは、下手なオペラより大変な仕事であった。しかし面白くもあった。なによりシュッツがこれらの人物の本質を良く捉えているのに感心した。彼はなんといっても演劇作家である。 

 大きな仕事の前にはいつも飛んでもないことが起こる。9/10(土)午後4時半過ぎ、いつもしている真珠の首飾りの糸が切れ、床に珠が一つ転がった。瞬間「杉山先生が!」との思いがよぎり、すぐにえりさんに電話しようと思ったが、「落ち着け」と我が心に言い聴かせ暫くじっとしていた。5時5分前ごろ電話。えりさんだ。「父が・・・The End です。」

 8/16(火)に病院に伺った時は、お渡しした9/16の招待状と「便り」「シュッツ40年の軌跡」など、細かい字をすべて読んで下さり、「ああ、元気だったら行くのにね」と仰った。「弓子さんは幾つ?」「73歳です。」「ああ、若いね!」とにっこりされ、返り際には Vサインで送り出して下さった。先生のお顔は去年位から日に日に穏やかになられ、この世の時間の中で、時でありながら時の束縛を超越した、イエスの約束する『永遠の生命』を生きておられることがはっきりと分かった。

 9/14(水)、近親者のみのご葬儀に参会を許され、そこで詩編121「我、山に向かいて眼を上ぐ」(武久源造作曲)を歌う。「視よ、イスラエルを守る者はまどろむことも眠ることもなからん・・」で水色のシャツを着たえりさんがサアッと音も無く走り込み、身体中で亡き父・杉山好氏に思いを迸らせた。「主は汝を守るものなり。汝の右の手をおおうかげなり。」「昼は日、汝をうたず。夜は月、汝をうたじ。」この節が終る頃、彼女は居なくなっていた。歌いつつ、踊りつつ、時なき時を共に過ごすことが出来た。えりさんは葬儀のあとで、「過去世も今も未来も一つだと思う」と言った。

 9/21(水)新聞に杉山先生の訃報が掲載された。

 以下、ご家族からのお知らせです。ご参会ご希望の方はお覚え下さい。

 杉山好 お別れの会は、10月29日午後1時から東京都多摩市南野2の10の1、恵泉女学園大チャペルにて。喪主は長男直(なおし)氏。

コメント(6) [コメントを投稿する]
_ 山本 葉子 2011年09月22日 23:34

淡野先生<br>昨日は、台風首都圏直撃、だいじょうぶでしたか。いろいろな人に、無事の確認をしながら、先生のところや、シュッツ合唱団はたしか、水曜日練習があるはずと思いながら、気になっていました。練習は当然、お休みになったのですね。<br><br>Geistriche chormusik 演奏会、本当にすばらしかった。<br>プログラムを読み、これだけのことを書けるのは、淡野先生ただおひとりしかいない、と改めて尊敬の念を覚えざるを得ません。<br>73歳の先生は、ますます命の根源に近づいておられるように感じ、(シュッツの霊が宿っているのを感じました)そして、そのエネルギーをたくさんいただいてきました。人間、一生成長です、という言葉を、私は何人もの人から聞き、実際、歳を経るほど、ますます輝いていく方々を見て、励まされてきました。先生は、私が出会った、40代の頃(今の私と同じくらいのお歳の頃)、私は22歳、すでに30年近くがたっていますが、ますます、深く、そして、人間の英知をきわめ、神の神秘に近づいていっておられるように、受け取られます。太郎さんとご一緒に歌われた、あの、美しい歌声。これからも、ますます、磨かれ、天上に届く歌声を私たちに届けてください。<br>私も20代に歌った、ガイストリヒェ・コアムジーク、いつのまにか、一緒に心の中で歌っていました。<br>Also を2回歌ってくださり、あぁ、私も必ず、いつか、また歌える日がくる、10年後、あるいは20年後、いつかわからないけれど、かならず、糸がつながっていることを確信しました。今、歌を歌うことが楽しくてしかがたありません。神への賛美を歌いながら、そして、やさしい心の歌を歌いながら、淡野先生と出会えたこと、同じ時代に生き、先生と出会い、お世話になり、そうして、札幌という1000キロ離れた所に住みながら、いつも心にかけてくださる先生に、感謝の言葉もありません。どうぞ、お身体を大切に、いつまでも、お元気でご活躍ください。できる限り、1年に1度は、演奏会にかけつけます。そしていつの日か・・・<br> バッハの研究者であられた、杉山先生は、天に帰られたのですね。うしろをふりむくと、「聖書の音楽家 バッハ」があります。杉山先生は、今、バッハとともに、神のもとにあり、永遠の命へと新たに生まれて、これからも私たちを励まし続けてくださるのでしょう。+amen <br><br> またお会いできるのを楽しみにしております。<br> 太郎さんによろしくお伝えください。<br> 桃子さんはお元気ですか。<br> 先生も、東京ーミネアポリスの往復で、お疲れになりませんように。でも、かわいいお孫さんの顔を見られたら、元気が出ることでしょう!<br> 私信のようになって、すみません。<br> また、手紙書きます。<br> 16日はすばらしいコンサート、ありがとうございました。

_ 山本 葉子 2011年09月23日 05:36

淡野先生<br>大事なことを、書き忘れて、早朝目覚めてしまいました。<br>先生、お願いがあります。Geostriche chormusikと Der Schwannengesangをレコーディングしてくださいませんか。<br>演奏会の帰りの電車の中で、他の演奏団体のシュッツを聞き、・・・聴こうとおもいましたが、あまりにもシュッツ合唱団の演奏とちがうので、やめました。なんというか、洗練されすぎている、「音楽」にはなっていても、肝心な何か、が伝わってきません。「白鳥の歌」もイギリスのある合唱団のCDも、物足りない。東京の、カテドラルに足を運べない日本の多くの人のために、この今こそ、ぜひ、シュッツ合唱団の「シュッツの音楽」を届けていただくことはできませんでしょうか。私は、「これぞシュッツ」と、自信をもって、お勧めしたい方がたくさんあり、手持ちのCDでは、テクニック的なものはよくても、シュッツの本質的な、根源的な、そして、先生にしかできない、シュッツの命をよみがえらせるという「神業」が、伝わってこないのです。あるいは、それは、ひょっとして、カテドラル、というその場でしか、場を共有した者だけに許された、何かで、録音されたものは、また違ったものになってしまうのかもしれません。でも、先生が50年近くも取り組んでこられた、シュッツの音楽を、どうか、今、この危機の日本にあって、演奏会に行けない人、悲しみと苦しみをかかえた多くの人に、ぜひ、届けてほしいのです。<br>厚かましいお願いですが、心の片隅にでもおいてくだされば幸いです。

_ Y.TANNO 2011年09月23日 10:11

葉子さま<br>ご丁寧な感想を有り難う! わざわざ札幌から出て来て下さって! 嬉しかったです。<br>斉藤郁夫さんも函館から、井上夫妻は新潟から、ほかにも沢山以前にGCMを歌った旧団員の方達が集って下さいました。<br>実はこのコンサートの前9月初旬からGCMのレコーディングは始まっています。うまく行けばあと二回(9月末、10月末)で録音は終了します。リリースは来年になるかと思いますが待っていて下さい。その前にシュッツ《ルカ受難曲》も出るはずです。

_ eri sugiyama 2011年09月24日 00:59

I love!! yumiko momoko akenechan THANK YOU THANK YOU SO MUCH<br><br>感謝にたえません。本当にありがとうございます。杉山えり

_ eri sugiyama 2011年09月24日 01:08

ごめんなさい綴り間違えました。I LOVE AKANECHAN !<br><br>本当にいつもありがとうございます。とこしえにどうぞ、よろしくお願い致します。えり

_ Y.TANNO 2011年09月28日 00:40

えりさん! 大きな沢山の愛をありがとうございます。よく考えてみれば、確かにえりさんと桃子、茜にはパフォーマーとしての共通項がありますね。特に茜はものすごい女優気質というか、「ごっこ遊び」をすると本当に面白いのです。今度ゆっくりブログに書きましょうか。


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