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ムシカWeb通信


■ 2008/04/17 鳴り響く2008年

 3/29、4/5、4/12 に行われた「教会暦によるバッハ・カンタータシリーズ」が終わりました。復活祭のカンタータ三曲(31番、42番、85番 いずれも名曲)にそれぞれの日の聖書箇所に合ったモテットなども歌いました。

 今回は特にドレスデンのギュンター・シュヴァルツェ教授の<鳴り響く2008年>と題されたカノンを冒頭に歌えたことが新鮮だったと思います。これは、去る3/12の<受難楽の夕べ>の終演後、カリグラフィーの蘆野ゆり子さんが、「カリンさんから」と言って手渡してくれたものでした。開けてみると、カノンの楽譜付きのカレンダーでした。1月から12月まで各月の聖句をテキストとしたものです。他に「年間の聖句」というのがあり、それは「Ich lebe, spricht der Herr. わたしは生きる! と主は言われる」というもので、この言葉によるカノンと、その月の聖句によるカノンが二重に歌われる、という造りで、各パートは素朴ながら合わさると重層的で華やか、という俄には信じ難い響きとなるのです。しかしこの奇跡が起こるのは、各歌い手が「そのピッチでしかない」という核心を突いた音程とリズムのピタリと決まった声が飛んだ時のみ。合唱団の地力が問われています。

 あとでゆり子さんにこのカノンの話をすると次のようなメールが。「先日のカリンからのプレゼントがその楽譜だったのですか? 昨年12月にProlisの教会での合唱練習に参加したとき、シュヴァルツェさんも一緒に歌っていらっしゃいました。その時、カリンが彼に、『来年はシュッツ合唱団創設40年、節目の年』ということで曲のプレゼントをお願いしていました。先週のカノンは聞きました。爽やかな曲。ProlisのKantor, Neumeister氏からクリスマスの曲のコピーを幾つか頂いています。Distler の15節に及ぶ曲は団員の個性が生き生きしていました。」

 なんとシュヴァルツェ教授は2008年という年が私達の大切な年ということで<鳴り響く2008年>を贈ってくださったのですね。またNeumeister氏からも。嬉しいことです。シュヴァルツェさんはProhlisの教会員なので、その日の聖歌隊の編成に合わせてその場でどんどん編曲もして下さるそうです。武久さんも「毎週コラールを書いたら歌ってくれる?」などと言ってくれますが。

 また今年はHugo Distler生誕100年という年でもあるので、SDGでは毎回Distlerの小品を取り上げています。小品といっても4/5にメンデルスゾーン・コーアの歌った<キリストは蘇られた>は歌詞が15番まであり、「連祷」という、同じ節で言葉の変わって行く宗教歌のジャンルに属するような曲で、ひとつのテーマにいかに集中し、持続させるか、という難題を与えられていました。自分たちのみで歌う時は「修行」でも、聴き手の居る会では、ということで、太郎がソロとトゥッティを交ぜながら進めては、と提案し、これがなかなかうまく行ったようでした。

 4/12にはアンサンブル・アクアリウスがDistler, Knab, Schubertを歌いました。Distlerの曲には器楽のリトルネッロがついていて、これをユビキタス・バッハの弦とオーボエの奏者が受け持ちました。器楽奏者は初めてのDistlerに驚き、感嘆しきりでした。ディストラーはカラヤンと同い年というのも考えさせられます。歴史の明暗をはっきりと見せた二人の生き方でした。彼らの死後の評価や如何に?

 私は今Berkeleyにいます。カリフォルニアの太陽と豊富な野菜、果物に囲まれ、茜と過ごす一ヶ月が始まったところです。こちらの様子はまた随時ご報告致します。Y.T.


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