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ムシカWeb通信


■ 2007/04/28 瀬尾文子 その四

 さて話は変わって、この演奏旅行中に、誕生日を迎えた人がいました。アルトのベアーテです。エピファニエン・カントライではいつも、だれかの誕生日が来ると、その週の練習のときに、みんなでその人のために歌を歌います。昨年11月の私の誕生日のときには、リクエストを聞かれ、シュッツの“Also“を一緒に歌ってくれました。また、あるときなど、誕生日を迎えた人がその日に限って練習を休んだので、わざわざおうちに電話をかけてその人を呼び出し、みんなで電話口で讃美歌を歌ってあげたりもしました。それくらい、こちらの人は誕生日を大事にします。誕生日というものをそれほど特別に思っていなかった私にとっては、なんだか不思議な感じですが、祝ってあげるのも祝ってもらうのも、心が温まっていいです。

 今回、たまたま旅行中に誕生日の来るベアーテには、特別になにかUeberraschung(サプライズ)を用意しようということになりました。そして、私が、いつかだれかが日本語の歌を歌ってみたいと言っていたのを思い出して、ドイツ人ならだれもが知っている “Weisst du, wieviel Sternlein stehen“という讃美歌の日本語ヴァージョンを歌ってみませんかと提案したら、大喜びでのってくれました。この讃美歌は私も中高時代に歌ったので、歌詞を確実に覚えていたのです。「すみわたる大空に星影は光り 風そよぐ野に山に草花は香る 数知れぬ空の星 神様はみな数え 一つずつ目をとめて守られる いつも」という第1節を私が歌い、クラウディアがディクテーションしました。面白いことに、日本語の「う」は全部「ue(ウー・ウムラウト)」になっていました。それからmとnは、しばしば取り違えられました。「Sueni wa ta rue」をドイツ人が読むと、私の耳には「すみわたる」と聞こえます。「一つずつ」の発音には、たいそう難儀してました。どうしても「ひとちゅじゅちゅ」になってしまう人もいました。意味はドイツ語の原文と全体的には同じなので細かくは説明しませんでしたが、「神様= Gott」は教えてあげました。

 前の晩にみんなでこっそり何度も練習して、いよいよ当日の朝になりました。朝食の途中で、ワインの注がれた全員分のグラスがジャジャジャーンと現われ、せいので歌い出しました。私はすかさず録音のスイッチを入れました。ベアーテさんは初めキョトンとしてましたが、事情を察するととてもうれしそうにしていました。

 近いうち、今度はバスのマルティンが誕生日を迎えるので、そのときには2節を覚えようと、みんな張り切っています。(続く)


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