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ムシカWeb通信


■ 2010/04/10 祝・復活祭「主に向かって新しき歌を歌え」

 復活祭です。われわれ音楽家はなによりもまず「主に向かって新しき歌を歌え」に立ち戻り、声を挙げようではありませんか。

 本郷教会の<復活祭オラトリオ>も無事終了した由、まずはお目出とうございます。くわしくはすでにkooonoさんが。感謝!

http://web.me.com/kooono/サイト/days/エントリー/2010/4/5_イースター.html

 ミネアポリスでは桃子がSt.Andrew Churchの礼拝でモーツアルトの<アレルヤ>とヘンデルの<我知る、我が救い主の生きたもうを>を独唱しました。教会のおじいさんから孫まで、という感じの大(?)オーケストラと一緒という豪華版でした。

 翌日、私は桃子の師事しているエリザベス・マニヨン先生のレッスンを受けました。マニヨン先生は往年のメトロポリタンの名歌手で、その後アメリカ各地の大学で教えておられましたが、お孫さんの教育に一番良い地域ということでミネソタを終の棲家とされ、先生に教えを受けたい生徒たちがまたこぞってミネソタへやってきたとのことです。桃子の‘パリを引き上げミネソタへ’、という決心もマニヨン先生に教えを乞いたいがゆえでした。

 これまでも、先生に見て戴きたいという望みはあったにせよ、畏れ多くて簡単には決心がつきませんでした。しかし今年はシューマンの記念年で、私も東京で<女の愛と生涯>を二度も歌うことになったので、意を決して扉を叩いたのです。

 82歳の先生に「老い」という影が微塵もないのに驚き、その深く暖かい声に驚き、さらに決定的だったのは正真正銘の「本格」です。桃子はすべてのアタックを1オクターヴ下から取ることを指示されていました。その音から直に発声すると調性不明の音が鳴ってしまい、歌全体が歪むのです。合唱ではこの技術は鉄則で、この発声以外ではハーモニーが成立しませんので、シュッツ合唱団でも昔からしつこく練習していることですが、ソロの歌い手にここまで執拗に教えておられることに感動しました。確かにオペラ歌手でも真に優れた歌手はオーケストラの最低音の倍音の先端に自分の声を載せています。またフランスの伝説的音楽家ナディア・ブーランジェはヴァイオリニストがレッスンに来ると「オーケストラの最低音を聴きながらヴァイオリンの旋律を弾きなさい」という教えだったとか。

 マニヨン先生お身体が非常にしなやかで、側に立っていて戴くだけで、「音楽」が伝わってきます。演奏家は皆こうありたいものですが、指揮者こそこうあらねば、との思いを強くしました。<女の愛と生涯>の初めから四曲を見て戴きました。それぞれの歌を、その年齢になって歌う、レガートを基本としながらも、ここぞという言葉が光るように発音する、高い音で口を開けすぎない、など基本的なことはギーベル先生の教えと変りません。ただマニヨン先生はメゾでいらっしゃるので、全体的に大らかな暖かい感じの音楽です。

 このたびの「新しい歌」は「初心」と得心致しました。


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